ウッディエンス・メールマガジン

 

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■ ウッディエンス メールマガジン          2010/06/18  No. 016   
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■  木材の科学は日進月歩! 日本木材学会から最新の情報をお届けします  ■
                                     ■
                      発行 日本木材学会広報委員会 ■
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                    日本木材学会広報委員会委員長 林知行
                                                         
■■ 広報委員会からのお知らせ ■■

 本年度は2010年版の名簿が発行されますが、新法人の代議員選挙が12月に予定さ
れているため、例年より早く11月の初めには名簿が配布されていなければなりませ
ん。
 このため、例年より早く、名簿の後半に掲載される「研究組織と研究内容の紹介」
に関する調査を行いたいと考えております。
 7月末日までに調査を完了したいと思いますので、各会員のご協力をお願いいたし
ます。機関代表者等へは広報委員会名で依頼のメールを送ります。

■本号の目次■

・本号では、日本農学会会長に就任された大熊幹章元日本木材学会長(東京大学名
誉教授)のご挨拶、日本農学賞を受賞された谷田貝光克秋田県立大学木材高度加工
研究所長の受賞の声、日本木材学会中国・四国支部第21回(2009年度)研究発表会
の実施概要、前回のウッディエンスメールマガジンで未掲載であった2009年度日本
木材学会論文賞の受賞の声、北海道支部の活動紹介、組織と材質研究会2010年秋の
シンポジウムの予告を掲載します。 
 
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◆『木材利用の科学は農学か、工学か』
               大熊 幹章(日本農学会会長・東京大学名誉教授)

 古い会員の大熊と申します。森林総研の林知行ウッディエンス編集長からご依頼
を受け、久しぶりに木材学会の会員の皆様に文章を通してお会いすることになり、
嬉しく思っています。私に原稿執筆のご依頼が来たのは、多分私が日本農学会会長
に選出されたことによるものと思います。せっかくの機会を与えていただきました
ので、農学会の紹介、木材学会と農学会の関係、さらには農学・農業の中における
木材・木材科学・ウッドエンジニアリングの位置付けについて、個人的考えを述べ
させていただきます。

◇この続きは下記のリンクからご覧ください。
 http://www.jwrs.org/woodience/mm016/ookuma.pdf 

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◆『日本農学賞を受賞して』
               谷田貝光克(秋田県立大学木材高度加工研究所)

 去る4月5日東京大学山上会館での第81回日本農学大会で、日本農学賞受賞の栄
に浴することができました。あわせて読売農学賞も受賞することができました。日
本農学会、読売新聞社に心から御礼申し上げます。
 受賞対象はこれまで長年続けてきた研究をとりまとめた「樹木が生み出す精油成
分の化学的特性解明と利用技術開発に関する研究」です。研究内容は、樹木精油を
主として新規成分の分離・構造決定に始まり、成分特性を明らかにして、それらの
有効成分をいかに効率よく取り出して利用に供するかというものです。具体的に申
しますと、以下の5つの内容からなっています。セスキテルペン類を題材としたイ
オン反応、脱水素反応、生合成経路を検討したテルペン類の化学反応機構の解明、
森林大気中での樹木揮発性成分の挙動に関する成分特性の解明、樹木が生成する精
油成分の抗菌、殺虫・忌避、抗酸化、消臭作用などの生物活性と、構造と活性の相
関関係の解明、樹木精油を採取して利用に供するための精油採取装置の開発と経済
的精油採取技術の開発、林産廃棄物等木質系素材の有効利用を目的とした炭化・熱
分解液の特性解明と有効利用に関するものです。
 用材生産、環境保全など森林の働きは多様です。その働きを経済効果に換算すれ
ば多額のものになることも知られています。しかし、その効果は十分に利用されて
いないのではないでしょうか。それが証拠に一つを例にとれば、間伐材や林地残材
の利用率はきわめて低く、山の手入れが滞っているのが現状です。実はこんな見捨
てられていたものにこそ、すばらしい働きがある、そんな考えで研究を進めてまい
りました。木は伐らなければ育ちません。そして利用されなければ元気な森は育ち
ません。元気な森を育てるには、従来の用材生産を目的とする森林整備も必要です
が、森林の機能を活かした幅広い利用が必要だと思います。林地残材のバイオエタ
ノール、ペレット等エネルギーとしての利用、機能性を備えた抽出成分の利用、都
会のヒトにやすらぎを与える森林レクリエーションの場としての利用などもその一
つです。そうした幅広い森林の利用が回り回って森林に還元され、森林整備に貢献
できるのではないかと思います。そんな思いでこの研究を続けてまいりました。見
捨てられている資源はまだまだたくさんあります。林地残材などはその代表的なも
のでしょう。ゼロエミッション、リサイクルの時代になり、ゴミこそ資源の時代で
す。ゴミと考えられていたものにこそ、なににも勝る宝物が秘められているのかも
しれません。
この研究を進めるにつれ、植物成分の働きの奥深さに魅了され、深みにはまってき
た感があります。まだまだ我々の知らない未知の世界が植物には広がっているよう
に思うのです。それを突き止め、上手に利用しながら植物とともに生きていくこと
が、これからの時代には求められているように思います。植物も動物もヒトもみん
ながともに生きていく、それこそが共生の時代、そして地球がみどりを保ち、いつ
までも元気でいられることでしょう。
 今回、農学会に加盟している学会等の団体をみて感じたことは農学という範囲が
たいへん広いということでした。学会というと専門的な狭い範囲の研究を行ってい
るのが常ですが、学会同士がお互いに追求できる共通の接点を見いだして共同で研
究を推進することによってこれまでの視点とは違った新たな展開ができるのではな
いでしょうか。
 今回の受賞にあたっては日本木材学会会長はじめ、木材学会関係者に多大なるお
世話になりました。ここに改めて心から御礼申し上げます。
 研究生活を歩き始めた頃に天然物研究の魅力を教えてくれた先生方、ご指導、ご
鞭撻を賜った先輩諸氏、ともに研究を進めてくれた研究者の方々など、多くの皆様
のご支援のもとに、この一連の研究を進めてくることができました。ありがとうご
ざいました。


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◆日本木材学会中国・四国支部第21回(2009年度)研究発表会の実施概要
             片山 健至(香川大学農学部生物資源利用学大講座)
 
 去る2009年(平成21年)9月15日(火)〜16日(水)に日本木材学会中国・四国
支部第21回(2009年度)研究発表会が,島根県松江市の島根県立産業交流会館
“くにびきメッセ”にて,島根大学総合理工学部の同研究発表会事務局(代表 中
尾 哲也 教授)の皆様のお世話の下に開催されました。
 1日目は,午前中に研究・技術発表(口頭発表19件,2部門2会場)を,昼食時に
本支部理事会を,午後は研究・技術発表(展示発表16件)に続いてシンポジウム
(基調講演1件,パネルディスカッション)を行い,夕刻18:00からは研究交流会を
行いました。
 2日目は,後援事業としての森林バイオマス利用セミナー2009を王子製紙株式会
社 米子工場での見学会として行ないました。

◇この続きは下記のリンクからご覧ください。
 http://www.jwrs.org/woodience/mm016/katayama.pdf 


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◆第3回日本木材学会論文賞
『論文賞について』
                  中田 欣作(奈良県森林技術センター)
                  小松 幸平(京都大学生存圏研究所)

 このたびは、私共の論文に栄えある賞をいただきまして、誠にありがとうござい
ました。
 研究対象としました強化LVLとは、奈良県産の良質のスギ単板を樹脂含浸、加熱
圧縮および積層した高強度な材料です。強化LVLは集成材の接合材料として優れた
性能を発揮しますので、これを用いた門型ラーメン架構を新しい木質構造物として
実用化しました。
 本論文は長年の研究開発の集大成とも言える論文であり、一連の研究では材料開
発、性能評価および実用化に取組んでおります。
 まず、材料開発では、スギ材の持つ性能を最大限に引き出すための検討と使用目
的に合った性能に的を絞り込むことにより、総合的な性能の向上を図りました。性
能評価では、基礎試験とともに実大の実証試験を行うことにより、実用化に際して
の問題点の抽出と各種の安全性に対する評価を確立しました。最終的な実用化では、
これまでに検討してきた加工方法および設計方法の見直しにより技術の完成度を高
めました。
 本論文では、強化LVLを用いた門型ラーメン架構を提案しています。この門型ラ
ーメン架構では強化LVLが持つ優れた性能を十分に発揮するとともに、個々の性能
を基にして全体の性能の予測が可能となりました。このように門型ラーメン架構の
耐力発現機構を実証することにより、新しい木質構造物の実用化が可能となりまし
た。
 研究の取りまとめに際しましては、多くの研究者の方々からご指導とご助言を
頂きました。皆様に心から感謝申し上げます。

◇この続きは下記のリンクからご覧ください。
 http://www.jwrs.org/woodience/mm016/nakata.pdf 

	 	
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◆北海道支部活動紹介 「第41回研究会」

               佐野 雄三(北海道大学)
               伊藤 洋一(北海道立総合研究機構林産試験場)

 北海道支部では、毎年恒例の活動として研究発表会と研究会を実施している。こ
のうち研究発表会は、例年10月下旬〜11月上旬の時期に行われている。1年ごとに
札幌、旭川で交互に開催することになっており、札幌で開催するときには日本森林
学会(旧林学会)北海道支部の研究発表会と合同で実施している。一方の研究会は、
年度開始間もない5月後半に開かれる総会とセットで行うことになっている。札幌
または旭川で開催されることが多いが、テーマや内容によっては他の市町村で開催
されることもある。
 本年度(2010年度)の研究会は、5月19日(水)に岩見沢市およびその近隣にて行
われた。「道産カラマツの資源事情と利用の現況」をテーマに掲げ、講演会と見学
会を行った。北海道のカラマツ造林木に関しては、最近になって付加価値の高い建
築材として使われるようになり需要が増していること、あるいはクリーンラーチの
名で売り出し中のグイマツとのF1品種のことなど、明るい話題を耳にするようにな
っている。その一方で、皆伐後の植林が進まず、将来の枯渇が憂慮されるという旨
の30分ものの特番がNHK北海道により報道されるなど、新たな問題も生じている。こ
うした何かと話題になっているカラマツの現況について、専門家による講演と現地
見学により理解を深めようというのが、今回の研究会の趣旨である。

◇この続きは下記のリンクからご覧ください。
 http://www.jwrs.org/woodience/mm016/sano.pdf 


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◆日本木材学会組織と材質研究会2010秋のシンポジウム―心材の形成―

                 中田了五(森林総合研究所林木育種センター)

 組織と材質研究会では、木材の組織と材質についての様々な研究トピックを選ん
で定期的にシンポジウムを開催しています。2010年は心材の形成を取り上げます。
 樹木特有の現象である心材の形成は、高い耐朽性と美しい彩色を天然に付与する、
木材の利用にとって重要な現象です。心材の性質とその形成については古くから研
究が行われてきました。しかし、種間および種内個体間で心材の色や量が大きく異
なるように、心材の形成は多様性に富んでいます。さらに、樹幹の奥深くで進行す
る現象であることもあって、心材の形成については多くの謎があります。本シンポ
ジウムでは、第一線の研究者に心材形成に関する多様な研究成果を紹介いただき、
心材の形成についてわかっていることを整理し、わかっていないことを明らかにし
ます。本シンポジウムにより今後の心材形成研究の方向性を探る契機としたいと思
います。
 心材の形成に関心のある方はもちろん、多くの木材科学者の参加をお待ちします。

主催:日本木材学会組織と材質研究会
日時:2010年9月13日(月)13:00から14日(火)12:30
場所:名古屋大学 東山キャンパス 環境総合館レクチャーホール
HP:詳細および最新情報は研究会ホームページに掲載します。あわせてごらんく
ださい。
   URL: http://www.jwrs.org/kenkyu/wa_wp/resources/2010symposium.html
内 容:
 イントロ 心材の多様性と心材形成をめぐる謎(森林総研林育種セ)中田了五
第一部 心材形成の四要素
 放射柔細胞の細胞死    (東京農工大学)半 智史
 心材成分の堆積      (名古屋大学)今井貴規
 水分状態の変化      (九州大学)松村順司
  細胞壁の二次的な構造変化 (北海道大学)佐野雄三
第二部(14日) 心材形成に挑む多様な研究
 TOF-SIMSの心材形成研究への導入     (名古屋大学)福島和彦・齋藤香織
 Cryo-SEM とTOF-SIMSでみた心材形成       (森林総合研究所)黒田克史
 心材成分生成および心材形成に伴う遺伝子の発現 (森林総合研究所)吉田和正
 心材形成研究を発展させる新顕微鏡法      (森林総合研究所)松永浩史
参加費:1000円程度(要旨集代)(学生無料)
懇親会:13日シンポジウム後に予定
連絡先:シンポジウム企画担当:中田了五(森林総合研究所林木育種センター)
    Email: ryogo@affrc.go.jp Ph. 0294-39-7012 Fax. 0294-39-7352 
   参加ご希望の方は上記連絡先まで、所属、氏名、連絡先、懇親会参加の有無
   をご連絡下さい。


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■日本木材学会の刊行する学術雑誌はインターネットで読むことが出来ます。最新の
学術情報をぜひご覧ください。
◎和文誌:木材学会誌 電子ジャーナル版
    http://www.jstage.jst.go.jp/browse/jwrs/-char/ja/

◎欧文誌: Journal of Wood Science 電子ジャーナル版
    http://www.springerlink.com/content/1611-4663/
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