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■ ウッディエンス メールマガジン 2006/12/25 No. 002
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■ 木材の科学は日進月歩! 日本木材学会から最新の情報をお届けします ■
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発行 日本木材学会広報・情報委員会 ■
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■本号の目次■
・会員の研究紹介
◆『シロアリの意外な利用法』 近畿大学農学部 板倉修司
◆『オレオレジンの有効利用に向けたモノテルペン合成酵素遺伝子の機能解析』
島根大学総合理工学部 加藤定信
・木材に関する話題から
◆ 北大札幌キャンパスの風倒木利用 (2) 北大ポプラチェンバロ製作顛末記
チェンバロ製作家 横田誠三
・関連行事情報
◎公開シンポジウム
「地材地建を地力で推進」シンポジウム (日本木材学会九州支部)
◎木質ボード・木質複合材料シンポジウム
・その他
◎書評 山内龍男著「紙とパルプの科学」
◎関連リンク 住まいの情報発信局
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■会員の研究紹介コーナー■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
日本木材学会には研究分科会という組織があります。そこではいくつかの共通の研
究対象に興味をもつ会員相互の情報交換や新たな成果を発表するなど、さまざまな活
動が行われています。このコーナーでは本号から、それぞれの研究会の幹事の方に興
味深い研究をされている方を順番に紹介していただくことにしました。
今回は《生物劣化研究会》から推薦された板倉修司氏と《抽出成分と木材利用研究
会》から推薦された加藤定信氏の研究をご紹介します。
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◆ −シロアリの意外な利用法−
『シロアリの木質バイオマス資源化機能を活用したきのこ廃菌床からの
バイオディーゼル燃料の生産』 近畿大学農学部 板倉修司
食用きのこの空調施設栽培の増加により,廃菌床の発生量が急増しています。廃菌
床は堆肥あるいはきのこ栽培の培地基材として有効に活用されていますが,新たな利
用方法の開発が望まれています。きのこ廃菌床には,多くのセルロースやヘミセルロー
スが未消化の状態で残存しています。
家屋害虫として知られるイエシロアリとヤマトシロアリの栄養価を分析したところ,
シロアリ乾燥質量の約45〜70%が脂質であること,その脂質を構成する主要な脂肪
酸がオレイン酸(約60〜70%),リノール酸(約10〜15%),パルミチン酸(約
10〜15%),ステアリン酸(約5〜10%)であり,組成的にはオリーブオイルに近
いことが見出されました。このことは,シロアリから絞ったシロアリオイルをメタノ
リシスによりメチルエステル化することで,バイオディーゼル燃料として利用できる
ことを意味しています。
シロアリは,セルロースやヘミセルロースを主要な栄養源としているため,きのこ
廃菌床を餌として生育することができます。産業廃棄物である廃菌床を餌としてシロ
アリを飼育し,大きく育ったシロアリから絞ったシロアリオイルをメチルエステル化
し,バイオディーゼル燃料として利用するとことが可能かもしれません。この技術を
現実のものにするためには,シロアリの階級分化を制御する技術の開発という難関を
乗り越えなければなりません。シロアリの変態がどのようにコントロールされている
のか不明な点が多く,検討を続けています。
ここでは,シロアリの食品としての成分分析結果を中心にご紹介します。
◇この続きは下記のリンクからご覧ください。
http://www.jwrs.org/woodience/mm002/itakura.pdf
◇問い合わせ先:近畿大学農学部応用生命化学科森林生物化学研究室
板倉修司 TEL 0742-43-7305(直通)/ FAX 0742-43-1445
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『オレオレジンの有効利用に向けたモノテルペン合成酵素遺伝子の機能解析』
島根大学総合理工学部 加藤定信
針葉樹に含まれているオレオレジンとは,木の香り成分や,松ヤニなどをまとめ
たものの名前で,テルペノイド(天然物最大のグループ)に属する,モノテルペンや
セスキテルペン,ジテルペンといった化合物群によって構成されています。オレオレ
ジンは本来,植物の防御・コミュニケーション物質であるわけですが,商業的にも高
い価値を持っていて,医薬,農薬,溶媒,香料,接着剤,製紙用サイズ剤,印刷イン
キ等の原料として利用されています。
木の利用といえば木材を連想しますが,柱や板を製材した後の残り物と思われてい
る枝葉や鋸屑には,たくさんのオレオレジンが含まれているので,それを抽出・利用
することで樹木をより有効に利用することが出来ます。さらにオレオレジンの中には
抗ガン作用等の非常に有効な薬理作用を示す成分も含まれているので,そのような成
分を取り出すことで木材に大きな付加価値をつけることも出来ます。
オレオレジンを種々の工業原料として利用する際には,ある特定の成分を効率的に
大量生産することが望まれます。そのためには,テルペノイド生合成の効率を向上さ
せるための,分子制御に関する遺伝子工学的研究が必要となります。
オレオレジン成分の化学組成は,同一種でも個体によって大きく異なります。すな
わち様々なオレオレジンにおけるキモタイプ(化学成分組成により分類される同一種、
ケモタイプ)が存在するわけですが,我々はその異なるキモタイプから,それぞれの
モノテルペン合成酵素遺伝子やそれらの調節領域を単離して,キモタイプごとの変異
を調査することにより,モノテルペン組成を制御している分子機構を明らかにしよう
としています。
本研究により,モノテルペン組成の制御機構が明らかになれば,オレオレジンを工
業スケールで利用するための研究や,病虫気象害に抵抗性のある樹木を作出する研究
に応用することが可能となると考えています。
◇この続きは下記のリンクからご覧ください。
http://www.jwrs.org/woodience/mm002/kato.pdf
◇問い合わせ先:島根大学総合理工学部 材料プロセス工学科
加藤定信 TEL&FAX: 0852-32-6484
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■木材に関する話題から■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
マスコミなどでも取り上げられた木材に関する最新の話題を関係者がご紹介します
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◆北大札幌キャンパスの風倒木利用 (2) 北大ポプラチェンバロ製作顛末記
横田誠三 チェンバロ製作家
"Boys, be ambitious!" クラーク博士の言葉で有名な札幌農学校=現北海道大学
のポプラ並木が、2004年9月、台風18号による強風で多数倒れたことをご記憶の方
も多いと思います。同大学の平井卓郎教授の指揮のもと進められたポプラ並木修復の
大がかりな作業も一段落し、大きな被害を出したエルム等、学内の木々もようやく平
静を取り戻したようにみえます。
倒れたポプラ(セイヨウハコヤナギ)でチェンバロを作ろうではないかという話は、
北海道教育大学旭川校の市川信一郎教授(現在は岩見沢校に転任。音楽学)の御発案に
よるものです。バロック時代にチェンバロの材料としてポプラ材が使われたことを、
よく御存知だったのです。筆者とは30年来のおつきあいなのですが、とにかくすぐ
に来て材を見てほしいという、突然の電話でした。
同年10月25日、旭川郊外の田野木材の製材場に赴き、早くもみぞれの降る寒さの
中、北大から提供された7本の倒木ポプラと対面しました。太いものは80aを越え
る見事なものでしたが、畏れていた通り、複雑に枝を伸ばした凸凹のある丸太です。
末口から見ると普通の年輪があるのですが、元側は年輪が5つも6つも渦を巻いてい
るというシロモノでした。
◇この続きは下記のリンクからご覧ください。
http://www.jwrs.org/woodience/mm002/yokota.pdf
◇横田ハープシコード工房ホームページ
http://www.h4.dion.ne.jp/~y-cemb/
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■関連行事情報■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
この欄では木材科学に関するシンポジウム等の情報をご紹介します。
その他の木材学会の行事予定は http://www.jwrs.org/events/event.htmlで
ご覧ください。
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◎「地材地建を地力で推進」シンポジウムが日本木材学会九州支部主催で開催されま
す。
スギ等国産材も成熟期に達し、その需要促進が課題となっています。少品種大量生
産工場を設立して集約的 に低コストで生産する方法によった対策が散見されますが、
その需要先は大量消費地や遠隔地に頼らざるを得ない現状です。 また、消費地が集
中することから競合も激しくなります。地方における地元材の需要促進は、小規模な
がら地元での継続的消費をまず確立するところから始めることができれば、地方の習
慣や伝統に応じた生活スタイルにきめ細かく対応することも可能となります。
この様な考えから、本シンポジウムは、中津市での地材による学校等公共施設木造
化の取り組みに関する研鑽を目的とし、森林の健全な維持管理を果たすための素材供
給とその地域木材の特性、さらには地域建築物への地域材であるスギ材の継続的利用
の可能性などをそれぞれ専門家に説明していただき、また、その成功のポイントを議
論していく予定です。
日時:平成19年2月22日(木)
場所:小幡記念図書館研修室 (大分県中津市片端町)
詳しくは
http://www.jwrs.org/events/KyushushibuSymp061205.pdf をご覧ください。
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◎木質ボード・木質複合材料シンポジウムが京都大学生存圏研究所で開催されます。
木質ボード・木質複合材料・プラスチック複合材などの様々な木質材料の現状・進
展、新材料・新技術をテーマとした講演会、ならびに新しい木質ボードや木質複合材
料の展示も行われます。
日時:平成19年2月22日(木)、23日(金)
場所:京都大学生存圏研究所 木質ホール3F大会議室
(JR奈良線・京阪宇治線黄檗駅より徒歩約10分)
詳しくは
http://www.jwrs.org/events/23th%20Board.pdf をご覧ください。
■会員の新著作紹介■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
この欄では木材学会会員が書かれた最新刊などをご紹介します。
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◎山内龍男「紙とパルプの科学」(京都大学出版会)
ASIN: 4876988188, 191ページ, サイズ : 19×13 cm, 1,575円
「紙とパルプの科学」と題する山内龍男先生(京都大学大学院農学研究科森林科学
専攻)の著書が京都大学出版会から2006年11月に出版されました。紙パルプ分野
だけに焦点を当てた教科書的な本は久しぶりで、パルプ製造と漂白、環境問題、抄紙、
紙の物性などの広範な内容を扱っています。紙の製造や特性について幅広く基礎的な
知識を得たい若手の技術者にとっては絶好の書と言えます。現代的な話題であるバイ
オマス利用、環境問題、文化財科学的に見た和紙についても言及されています。熱画
像法や破壊靱性といった新しい手法やアプローチの紹介があるのもこれまでの教科書
にはなかった特徴で、製紙科学の実験的な手法を知りたい人にもお勧めです。
詳しくは、http://www.amazon.co.jp/gp/product/4876988188/sr=11-1/
qid=1165464511/を参照して下さい。
[推薦者 江前敏晴 (東京大学) ]
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■関連リンク■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「住まいの情報発信局」のメールマガジンで「ウッディエンス・メールマガジン」
の発行を紹介していただきました。
http://www.sumai-info.jp/mailback/n/20061113.html
「住まいの情報発信局」トップページ http://www.sumai-info.jp
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■日本木材学会の刊行する学術雑誌はインターネットで読むことが出来ます。最新の
学術情報をぜひご覧ください。
◎和文誌:木材学会誌 電子ジャーナル版
http://www.jstage.jst.go.jp/browse/jwrs/-char/ja/
◎欧文誌: Journal of Wood Science 電子ジャーナル版
http://www.springerlink.com/content/1611-4663/
━━━━<広 告>━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「ウッディエンス」では以下の欄に掲載する5行広告を募集します。
なお、広告は日本木材学会の賛助会員からのみ受け付けます。
詳しくは末尾の広報・情報委員会までメールでお問い合わせください。
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□ 本メールマガジンに対するご意見・ご希望をメールでお寄せください。
□ 宛 先:日本木材学会広報・情報委員会
□ ウッディエンス・ホームページ http://www.jwrs.org/woodience/
□ 日本木材学会ホームページ http://www.jwrs.org
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無断複写・転載を禁じます。 日本木材学会
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