大量の有機物を蓄積する森林 −生物の持続性の源− |
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佐々木恵彦氏 | |
Satohiko SASAKI |
プロフィール |
1935 年小樽生れ.森林総合研究所を経て,東京大学農学部教授を停年退官,現在,日本大学生物資源科学部長,日本学術会議副会長,林政審議会会長を務める.この間,樹木の生長に関する研究を行う一方,熱帯林の修復研究に力を入れる. 文部省プロジェクト「東アジアにおける地域の環境に調和した持続的生産技術開発のための基礎研究」のリーダーとしても活躍している. |
講演要旨 |
植物は光合成によって,有機物を生産し,同時に環境を形成する.植物の中でも,木は大きくなる構造を持っていて,有機物を木材として永年腐ることなく蓄積することが出来る.しかも,木は群として森林を形成することによって,大量の有機物を蓄積する.この有機物は大気中の二酸化炭素を吸収してできたものであり,森林は二酸化炭素の貯留場である.地球上の有機物の約90%が森林に存在するが,これを燃やすと,地球上の二酸化炭素は二倍になる. 一方,人間を含め,動物は光合成機能を持たないため,有機物を生産することが出来ない.このため,動物は植物を利用することによって,生命を維持している.植物資源を枯渇させるほど利用すると,動物も生きていくことは出来ない.したがって,地球上の植物の量と動物の量がバランスのとれた状態になっていることが重要である. 特に,森林の役割は大きく,森林に生息する動物や菌類をはぐくむだけではなく,耕地,河川,沿岸などにある他の生態系にも有機物を供給し,それぞれの生態系を維持している.さらに,水の浄化,水量の維持なども,森林の有機物の作用であり,森林の役割は極めて重要である. |
パネラー 岡本久人氏 |
パネラー 佐々木 光氏 |