木質資源の理想循環系 | |
佐々木 光氏 | |
Hikaru SASAKI |
プロフィール |
1932年大阪生れ.京都大学木質科学研究所教授を停年退官後,現在,秋田県立大学教授,同木材高度加工研究所長を務める.この間,日本木材学会長,日本木材加工技術協会理事を歴任する. 専門は木質材料と加工機械・システムの開発.著書に新編木材工学,すばらしい木の世界,木のひみつなど多数. |
講演要旨 |
人類はこれまで「生態系の癌」ともいうべき行動をとってきた.すなわち,自己の盲目的な発展を正しいものと信じ,他の生態への影響を顧みることなく,ただひたすら自己の便益を追求し,自己増殖をしてきた.このままでは近い将来,地球生態系は飢餓と環境汚染によって活動を停止し,結果として人類も滅亡するだろう.この姿が癌に似ているからである.制癌剤の働きは人間のためのものではあるが,結果的には癌細胞を長生きさせることに役立っている.人類にとっての自制心はさしずめ癌細胞にとっての制癌剤のようなものである. 木質資源は,また,鉱物資源や化石資源と異なり,再生可能であると言われている.適正な施業によってその資源量を増加させることが可能でもある.しかし,その再生には生命活動が関与するので,扱い次第で資源量が減少する危険性もあり,慎重を要する.とくに,その利用に際しては資源の成長量以下の範囲での利用は絶対的な要件であり,そのためにはあらゆる技術面からの極限的な有効利用を推進する必要がある. 木質資源は他資源に比べて生産,加工,利用,再利用,廃棄のあらゆる過程で省エネルギー的であり,無公害的,いやむしろ公益的な性格をもっている.その用途は建築や家具の材料,紙,パルプ,菌床など,時には化成品や食品添加物として,肥料,飼料として,人類生活のあらゆる分野で利用されており,環境問題との関連で,今後益々重要視されるであろう. 以上のように,木質資源は未来性豊かな資源であり,理想的な循環系を確立して未来永劫,人類と共に共存関係を保有してほしい資源である. |
パネラー 岡本久人氏 |
パネラー 佐々木恵彦氏 |