公開シンポ要旨
講演2「学校建築による地域再生 国重要文化財 日土小学校の概要と地域への波及効果」
愛媛大学教育学部教授 曲田清維
八幡浜市教育委員会生涯学習課 課長補佐 梶本教仁
日土小学校は、愛媛県八幡浜市の山あいに入った喜木川沿いに建つ戦後木造モダニズム建築の学校である。 設計は松村正恒(1913~1993)、中校舎が1956年、東校舎が1958年に竣工した。 築50年以上を経て、老朽化や現代に求められる教育環境とのずれは否めず、地域を二分した議論の末、 「地域の大切な文化財」「使い続ける学校」として2009年6月に保存再生を目途にした耐震改修及び新増築工事が完了した。
日土小学校の中校舎・東校舎は切り妻屋根の木造2階建てで、 喜木川に突き出た図書室前のベランダやテラスなど内外のすべてが子どもにとって居心地の良い空間となっている。 2012年末には国指定重要文化財(戦後建築では4番目)となり、新しい建造物文化財の境地を切り開いた。 こうした動きは公共建築物等の木材利用促進とも連動しながら、木造建築物の新築造営や保存再生についても良き影響を与えつつある。
講演3「丸太を使用した液状化対策工法」
飛島建設(株)技術研究所 沼田淳紀
2011年東北地方太平洋沖地震では,震央から380kmも離れた千葉県浦安市で液状化が発生し, 甚大な被害をもたらした.液状化被害は,震源から遠方であっても被害は甚大で, 広域で大きな被害が発生するのが大きな特徴である。したがって,この対策は,経済的であるとともに, 恒久性が高く,環境にも配慮した工法が望まれる。 現在国内の樹木は豊富にあり,国産木材を利用した需要の拡大が望まれている。 特に,木材を長期的に利用することは,炭素貯蔵効果により温室効果ガス削減に大きく寄与する。
木材は,地盤中の地下水位以深では,腐朽や蟻害を受けることなく長期耐久性を有することから, 地下水位の浅い地盤で発生する液状化対策に用いるのに適している。 このような背景から,丸太を使用した液状化対策工法が開発されている。 ここでは,開発の背景,対策メカニズム,対策効果,炭素貯蔵効果について述べる。
講演4「森林環境管理特別コースにおける人材育成の取組み 」
愛媛大学特命教授 林 和男
現在の林業は世界を見てみると、つとめて先進国型産業である。 人間の欲と生活圏環境を一緒に持続的に維持しようとすれば当然高い森林管理技術が必要になるので当然と言えば当然である。 そのためには森林管理高度技術者を育成する必要がある。そのために、 森林環境管理特別コース(修士課程)と森林環境管理リカレントコース(社会人課程)の2つのコースを開設している。DPは以下のとおりである。
- ア)精密森林管理技術を修得し、そのシステムを構築・運用できること。
- イ)森林環境を修得し、森林認証制度に対応する管理ができること。
- ウ)新たな森林管理作業を修得し、自ら作業実行を担えること。
- エ)流通・利用システムを修得し、資源の有効利用に対処できること。
- オ)「新たな森林管理組織」を担え、地域の森林の在り方を示すことができる。
これらに沿って講義を配置し、実習・演習を重視しながら開講している。