ポプラ
平成ポプラ並木
(イタリアクロポプラ
Populus nigra
var.
italica
)
平成12年植栽
ポプラの実
(種名不詳)
左下は今にも飛びそうな柳絮
薫風に漂う柳絮
イタリアクロポプラの材面(左:木口面、右:板目面)
本来、ポプラ(poplar)はヤマナラシ属の中でもドロノキ類に対する英語の呼称である。しかし、現在の日本ではもう一方のヤマナラシ類(アスペンaspen)も含めてポプラと呼ばれることが多い。北大構内には、在来および外来のポプラ類が数多く生育している。初夏の候にそれら緑化樹から飛散する柳絮(ヤナギ類全般の種子を覆う綿毛)は季節の風物詩である。材は軽軟で用途は限られるが、比強度はなかなか高い。
ニワウルシ(
Ailanthus altissima
)
花期(7月)の
ニワウルシ
(遠友学舎前)
花.
右上は雄花の拡大.
雌雄異種である
完熟前の実.
右下は実の拡大.
毎年、雌株は多くの実を付ける
材の木口面(上)と板目面(下).環孔材で木目は明瞭
中国原産の落葉広葉樹。明治時代の初期、中国から直接にではなく、ヨーロッパ経由で日本へ導入された。標準和名のニワウルシよりも、別名のシンジュの方が馴染み深いかもしれない。北大札幌キャンパス内では、大きく育った成木が多く見られる。繁殖力が強く、放っておくと繁茂する。ときおり企画されるキャンパスクリーンデーというボランティアによる清掃作業の時など、稚樹が大々的に駆除されることもある。材は木目明瞭な環孔材。色白で変色しやすく、密度が同程度の日本産材と比べると脆い。原産地の中国では、材が器具や薪炭などに使われ、樹皮が薬用に用いられるほか、若葉がシンジュサン(カイコの一種)の飼い葉に使われる。
北海道大学構内の樹木
イチイ (
Taxus cuspidata
)
イチイの植栽木
(北大博物館前)
イチイの実
キミノオンコの実
イチイの材面
(柾目)
北海道ではオンコと呼ばれ、緑化樹や庭木として多用される。北大構内でも至る所に植栽されている。雌雄異株で、雌木は初秋に赤い実を付ける。まれに黄色い実が生る個体があるが、これはキミノオンコと呼ばれ、園芸品種として珍重される。材は緻密で艶があり、白色の辺材と赤褐色の心材のコントラストが鮮やかで、建築の内装や工芸に重用される。
シナノキ(
Tilia japonica
)
秋の黄葉
(環境科学院前)
若葉.
葉柄基部にある赤褐色の託葉は開葉後間もなく脱離する
花.
へら形の包葉から小花を鈴なりにつける
材の木口面(上)と板目面(下).
不整年輪が頻出し、板目面にはリップルマークが生じる
北海道では山野に広く散生する。緑化樹にも使われるため、市街でもよく見掛ける。外見上、目立った特徴がなく、見過ごしやすいが、花期には辺りに漂う花の芳香がその存在に気付かせてくれる。材は散孔材。不整年輪が頻出し、リップルマークが生じることは、ほかにあまり見られない特徴である。均質で加工しやすく、細工物のほか、合板などにもよく使われる。樹皮からは強靱な繊維が得られ、古来より全国各地で利用されてきた。重要な蜜源植物でもある。
カエデ(
Acer
spp.)
立木の外観.
左=オオモミジ
A. amoenum
(中央ローン)
右=サトウカエデ
A. saccharum
(工学部前)
カエデの花.
左=ハウチワカエデ
A. japonicum
右=アメリカハナノキ
A. rubrum
カエデの実.
左=ハウチワカエデ
右=サトウカエデ
鳥眼杢が表れた
イタヤカエデ
A. mono
の材面
(追柾)
北大構内には、外国産樹種を含む多くのカエデ類が植栽されている。カエデといえば秋の紅葉が思い浮かぶが、春先の花も可憐である。左右対称な翼果を付けることはカエデ類に共通する特徴である。この翼果がひらひらと舞い落ちる様子にも風情がある。とくにハードメープルと称される一群の材は均質で強度性能が高く、運動具や楽器の部材に重用される。
ナナカマド(
Sorbus commixta
)
秋の紅葉
北大体育館前
花期(6月)の梢端
右上は花の拡大
真っ赤な実と
色づき始めた葉
左下は実の拡大
材面
(柾目)
北海道を含む広域の冷温帯林に散生する樹高10 mくらいまでの小高木である。モミジ類やヤマウルシなどとともに、秋の紅葉は鮮やかである。初夏には清楚な白い花を咲かせ、秋には赤い実を付ける。この実は低温を経ないと分解されない有毒成分を含むため、厳寒期まで鳥獣に食べられずに残る。材は辺心材の区別が明瞭な散孔材である。ナナカマドの名は、この材がかまどに7回くべても燃え残るほど難燃であることに由来するとも言われる。しかし、生木はともかく、乾燥した材が燃えにくいわけではない。
ハルニレ (
Ulmus davidiana
)
樹形外見:肥沃で適潤な土地を好む。
花:開葉前に地味な花を咲かせる。
実:楡銭と呼ばれ、初夏の薫風に乗って散布される。
材:環孔材。柾目面にくっきりと見える放射組織はレイフレックと呼ばれる。
シラカンバ(
Betula platyphylla
var.
japonica
)
新緑の木立
(弓道場前)
芽吹き.雄花から大量の花粉が飛散する
樹皮には遅くまで
くの字形の枝痕が残る
材面.
木口面(上)と
柾目面(下).
縦断面でピスフレックが褐色の筋状に
頻出する
北海道では平野部でふつうに見られ、緑化樹としてもよく植えられる。代表的な先駆樹で、裸地にいち早く定着し、純林を形成することも多い。材は散孔材。均質で加工しやすく、割り箸、氷菓の匙や棒、パルプ材などに使われる。また、春先の開葉前に立木の材から滲出する樹液が飲用に利用される。北海道では花粉症を引き起こす代表的樹木でもある。