スクレレイド、厚壁組織、厚壁細胞、ファイバースクレレイドについて
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スクレレイド、厚壁組織、厚壁細胞、ファイバースクレレイドのうち、現行用語集ではスクレレイドのみ定義されている。
スクレレイド
機械的強度を受持つ要素で、紡錘組織の細胞の性質を完全には示さずに、厚くてしばしば木化した二次壁をもち、完成した後はふつう原形質体を欠く。注: スクレレイドは多面体から多少細長くてしばしば枝分れしたものまで、いろいろの形を示す。材および樹皮にふつうに見出される型は石細胞である。このような細胞は、しばしば"sclerotic"という言葉で形容される; たとえば"sclerotic ray cell"というように。
IAWA用語集では、
Sclereid. (167) — A strengthening element that is not markedly prosenchymatous, but which has thick, often lignified secondary walls and which commonly lacks a protoplast when mature. Syn. Sclerotic cell. Note: Sclereids vary in shape from polyhedral to somewhat elongated and are often branched. The type commonly found in wood and bark is the brachysclereid or stone cell. Such cells are often described as sclerotic, e.g. "sclerotic ray cells".
新用語集案作成の過程で、
・紡錘組織という用語に削除提案
・注がわかりにくい
ことがまず指摘されていた。
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IAWA bark listではスクレレイドなどについては、sclerenchyma厚壁組織の一部として記述されている。一方、現行用語集やIAWA用語集では厚壁組織や厚壁細胞の定義がない。
よって、スクレレイドの定義を厚壁組織という用語を使って定義しなおし、厚壁組織や厚壁細胞という用語も新規提案する。
定義にあたっては、現行用語集、Esau's plant anatomyのglossary、IAWA bark listを参考にした。
なお、「厚壁組織は、繊維、繊維状厚壁異形細胞 (ファイバースクレレイド)、厚壁異形細胞 (スクレレイド)を含む」という記述が、厚壁細胞ではなく厚壁組織の方で記述されているが、これはEsau's plant anatomyとIAWA bark listにならっている。実際、sclerenchymaという用語で、単独のスクレレイド細胞を指す場合などがあり、厚壁細胞が必ずしも「組織」になっていなくても厚壁組織ということがある。
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樹皮の識別では、「スクレレイド」という用語が「厚壁異形細胞 (スクレレイド)」に置き換わっており、fibre-sclereidは「繊維状厚壁異形細胞 (ファイバースクレレイド)」とされている。
そこで、「樹皮の識別」にならって、厚壁異形細胞と繊維状厚壁異形細胞を見出し語とする。スクレレイドとファイバースクレレイドはそれぞれ同義語とする。
なお、樹皮の識別の厚壁組織の項ではIAWA bark listのfibreがすべて師部繊維と訳されているが、新用語集案では「繊維」は木部も師部もその他の組織も含めた記述としている。IAWA bark listや樹皮の識別で引用されているEvert (2006)とは、Esau's plant anatomy第3版のことである。
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定義作成においては、厚壁異形細胞の壁が多層構造であることや壁孔が多いこと、繊維が生細胞である場合と死細胞である場合などの記述は行なっていない。これらはそれぞれの細胞の特徴であって定義ではないと判断した。
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関連用語整理
厚壁組織 sclerenchyma
厚壁細胞からなる組織。また、植物体または植物組織における厚壁細胞の総称。厚壁組織は、繊維、厚壁異形細胞、繊維状厚壁異形細胞を含む。
厚壁細胞 sclerenchyma cell
多少なりとも肥厚し、しばしば木化した二次壁を持つ、形態や寸法の変異に富む細胞。
繊維 fibre
長く、通常先端が細く、木化したあるいは木化していない二次壁を持つ厚壁細胞。木材解剖学では道管及び柔組織以外の全ての細長い細胞に対する総称として便宜的に用いられる。
繊維状厚壁異形細胞 fibre-sclereid
繊維とスクレレイドの中間的な特徴を持つ細長い厚壁細胞。
厚壁異形細胞 sclereid
形態は多様であるが、典型的にはあまり伸長しておらず、厚い木化した二次壁を持つ厚壁細胞。
注: スクレレイドの形は多様で、多面体から多少細長い形状でしばしば枝分れする。材および樹皮にふつうに見出される型は石細胞である。このような細胞は、たとえば「sclerotic ray cell」というように、しばしば「sclerotic」という言葉で形容される。
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