ウッディエンス・メールマガジン


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■ ウッディエンス メールマガジン          2006/9/25  No. 001   
■                                    
■  木材の科学は日進月歩! 日本木材学会から最新の情報をお届けします  ■
                                     ■
                   発行 日本木材学会広報・情報委員会 ■
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■本号の目次■
 ・メールマガジンの発行にあたって
 ・会員の研究紹介:
  『腐朽による強度低下を考慮した木製土木構造物の耐久設計手法の開発』
 ・北大札幌キャンパスの風倒木利用 (1)
 ・「研究分科会」に参加しませんか
 ・R&Dツアーセミナー募集:
  『国産材利用最前線・火の国ツアー ー伐採現場から合板製造までー』
 ・関連行事情報
  ◎公開シンポジウム「森林資源の持続的利用を支えるバイオサイエンス」
  ◎講演会『日本林業再生の道(Part II) −現場の取組み−』
  ◎シンポジウム『真価を問う! −アジア・パシフィック諸国における
   木質ボードの最新事情−』
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■メールマガジンの発行にあたって■─────────────────────

 「ウッディエンス」(Woodience)というタイトルを見て、何を思い浮かべますか。
これは木材woodの科学sicenceという意味を込めた造語です。日本木材学会は20年
間にわたり、このタイトルで学会の広報誌を発行してきました。日本木材学会の活動
内容を社会一般に知らせるという役目を担ってきたのですが、昨今のインターネット
環境の普及状態を鑑みて、このたび紙媒体からメールマガジンに生まれ変わることに
なりました。

 日本木材学会は我が国の木材研究者を中心にした学術団体で、木材に関連する最新
の研究成果が学会誌、年次大会などで公表され、また新たな情報の交換が研究会等に
おいてなされています。最近では木材は様々な意味で環境に優しい材料として注目を
浴びています。このような時代に、私たちは木材に関する正確な、また、最新の情報
を社会に広く伝えていく必要を感じています。

 私たちは『ウッディエンス メールマガジン』を学会・会員と木材に興味を抱いて
くださる企業や一般の方との間の架け橋となるべく、今後内容を充実させて行きたい
と考えています。みなさまのご期待に応えられるように努力していきますので、ぜひ
ご愛読ください。

 なお、このメールマガジンは、e-mailアドレスを登録していただいている日本木材
学会の会員と、「ウッディエンス」購読者の方にお届けしています。本メールマガジ
ンを不要とされる方は、本メール末尾に示した方法で購読を解約してくださるようお
願い申しあげます。また、お知り合いの方に購読を勧める場合も、メール末尾にに登
録のアドレスを示しておきましたので、お伝えしていただけると幸いです。

 発行時期、回数に関しては今のところ不定期で、年4〜6回の発行を予定しています。
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■会員の研究紹介コーナー■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  実用化・共同研究等が期待される若手会員の研究成果をご紹介していきます
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『腐朽による強度低下を考慮した木製土木構造物の耐久設計手法の開発』
             北海道立林産試験場  森 満範、前田典昭

 野外環境下にある木材は腐朽菌によって劣化を生じる危険性がありますが、現状で
は腐朽程度と木材、ひいては木製構造物の残存耐力との関連が不明確です。このため、
木製土木構造物の構造計算等を行う場合は、初期強度のみが基準とされ、腐朽による
部材や構造物の経時劣化は考慮されていませんでした。

 そこで「耐久性(腐朽)」を「強度(強度低下)」という機械的性質の低下度合い
に置きかえることによって耐久性の指標を明確にするための検討を行いました。すな
わち、北海道内の各地域に設置された木製(カラマツ)土木構造物の腐朽調査により
得られた「腐朽程度と経過年数の関係」と、カラマツを用いた野外暴露試験やファン
ガスセラー試験(室内促進劣化試験)により得られた「腐朽程度と残存強度の関係」
から、土木構造物として使用されているカラマツの「残存強度と経過年数の関係」を
推定するとともに、腐朽によって低下していく部材強度の算出方式を確立し、それに
基づく構造物全体としての耐力変化の予測法および構造物耐力の安定計算式を提案し
ました。

 この成果によって、設計段階で耐力の推移を予測・制御できることから、用途に応
じて耐久性を考慮した木製(カラマツ)土木構造物を設計することが可能となりまし
た。さらに、部材交換やメンテナンスのスケジュールを予測できることから、コスト
試算を行う上でも有用な資料となり、他の樹種あるいは他用途の木製構造物に対する
耐久設計や維持管理技術につながるものと考えます。

 本成果は、北海道が発行する「土木用木材・木製品設計マニュアル」に掲載され、
関連業界で活用できるよう広く公開して普及を推進しています。今後も、データの追
加や推定の検証等を行うことによって精度の向上を図り、木製土木構造物の信頼性の
向上に寄与できればと考えています。そのためには、北海道だけではなく日本の各地
域、他の樹種についても同様の設計手法を適用していく必要があると考えていますの
で、今後、多くの方々のご協力をお願いできればと思います。

◇詳しくは http://www.jwrs.org/woodience/mm001/mori.pdf をご覧ください。
 問い合わせ先:北海道立林産試験場 企画指導部普及課  
             TEL 0166-75-4233(内線365、341)
 ※この研究・技術開発に対して、第7回(2005年度)日本木材学会技術賞が授与され
ました。

■木材に関する話題から■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 マスコミなどでも取り上げられた木材に関する最新の話題を関係者がご紹介します
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◆北大札幌キャンパスの風倒木利用 (1)

 北大札幌キャンパスでは,2004年9月の台風18号で約1500本の樹木が風倒害を
受けました。北大ではポプラ並木再生プロジェクトの一環として,ポプラ,ハルニレ
風倒木の利用に取り組みましたが,その過程で,多くのウッドクラフト作家や木材関
係機関により,様々な作品が生まれました(下記のリンクをご参照ください)。これと
平行して,学外グループによるポプラ材利用プロジェクトも立ち上がりました。その
中心はポプラ材を用いたチェンバロの製作で,2006年9月,記念コンサートが行わ
れました(これについては次号で紹介予定)。
 製作された各種の作品は,北大交流プラザ「エルムの森」,総合博物館でご覧いた
だけます。

 これらの風倒木利用は,都市緑化木との付き合い方にひとつの示唆を与えてくれた
ように思います。緑化木は個々の樹木が市民生活と結びついており,そこには新たな
植栽による更新では代替出来ない感情的要素があります。しかし,安全管理を考えれ
ば,腐朽の進んだ老木は断幹や伐採を行う必要がありますし,土地利用のための伐採
という要求も依然として存在しています。

 緑地管理者の多くは,この相反する要求の狭間で,妥協点を見出して行かなければ
なりません。その選択肢の一つに,保全要望のある樹木の伐採や断幹に際し,関係者
の相互協力の下で,木材としての利用を考えるという方法があります。もちろん,そ
れで問題が解決する訳ではありませんが,今後の方向として考える余地があるでしょ
う。

 このような利用は木材全体から見ればごくわずかですが,森林に触れることの少な
い都市住民にとって,身近で伐採された樹木が木材として利用されることを体験でき
る貴重な機会ではないかと思います。それが森林の持続的利用を考えるための小さな
里山として機能すれば,その効果は案外大きいかも知れません。

                 平井卓郎(北海道大学大学院農学研究院)

風倒木ポプラ関連リンク:
  http://www.fpri.asahikawa.hokkaido.jp/dayori/0507/1.htm
  http://www.h3.dion.ne.jp/~kem/2005news1-6.htm
  http://www15.plala.or.jp/koubou-yuuki/oke-popura.html
  http://blue.ap.teacup.com/ravensho/37.html
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■日本木材学会の「研究分科会」に参加しませんか■━━━━━━━━━━━━━━
 日本木材学会では、木材利用の分野で関心の高いと思われる技術・研究課題を取り
上げ、研究分科会による最新情報の取りまとめの活動を行っています。研究分科会で
は特定課題ごとに分科会会員をつのり、2年間にわたって情報の交換と取りまとめを
行い、終了時に参加会員にレポートで報告します。
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 今期の活動期間は平成18年11月1日から平成20年10月31日までの2年間で、下記
の3課題です。なお内容に関しては、会員が確定した段階で若干の変更を伴う場合も
あります。

○ 第1分科会課題「木質資源・材質ハンドブック」
  持続的な木質資源の安定供給を目指すため、供給可能な世界の木材資源とくにポ
  ストラワン合板用広葉樹、世界の早生樹、竹資源、薬用森林資源、その他の木質
  系資源について、資源量、材質、加工性、用途を調査し、取りまとめを行う。

○ 第2分科会課題「木材利用推進のための規格・法律ハンドブック」
  木材の使用および木質製品の品質・性能にかかわる法的規制、国内外の基準・規
  格類について調査・整理し、木材利用の拡大と技術開発の促進に資する資料を取
  りまとめる。関連法規、および基準・規格類の相互関係なども解説する。

○ 第3分科会課題「木とひとの感性・生理応答」
  近年、ひとの心理応答や生理応答に基づく「木材のよさと特性」の評価に関する
  応用研究が進展している。木と共生する生活、におい・音・視覚とやすらぎ、教
  育施設、医療福祉施設、ユニバーサルデザイン家具、住宅などに関する研究事例
  を整理し紹介する。

 これらの分科会に参加されますと、次の特典があります。
・活動の中間・最終報告のみならず、最新情報や資料が他に先駆けて入手できます。
・学識経験者や専門家で構成される分科会に参加し、意見交換や交流を深めることが
 できます。等々

◇詳しくは http://www.jwrs.org/office/kenkyubunkakaiver3.pdf をご覧ください。

■R&Dツアーセミナー参加者募集中■

 テーマ『国産材利用最前線・火の国ツアー ー伐採現場から合板製造までー』

 国産材の有効利用が重要であるとは認識していても、まだ対岸視している方、木材
のことならわかるが、森林・林業事情には疎い方、森林伐採の現場を見たことがない
方、林業先進県の事情を知りたい方、国産材利用の新しい取り組みを知りたい方、そ
んな方々のために、木材学会が熊本県の協力を得てR&Dセミナーツアーを計画しまし
た。火の国−熊本に行って、森林伐採現場から合板製造までを見学しませんか?

 もちろん、単なる「見て歩き」だけではなく、より深く国産材利用の現状を知り、
近い将来に向けての展開を考えていただくために、シンポジウムも開催します。

 日 時:2006年11月7、8日
 場 所:熊本県民交流館パレア
◇詳しくは http://www.jwrs.org/events/sashikaehinokunitour0816.pdf をご
覧ください。

■関連行事情報■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  この欄では木材科学に関するシンポジウム等の情報をご紹介します。
  その他の木材学会の行事予定はhttp://www.jwrs.org/events/event.htmlで
  ご覧ください。
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◎公開シンポジウム「森林資源の持続的利用を支えるバイオサイエンス」

 石油代替資源としてのバイオマスの利用拡大は、地球温暖化ガスの排出削減に大き
く貢献します。地球環境維持と人類存続の両立をめざし、バイオマスの約90%を占め
る森林資源(木質)を持続的に生産・利用していくバイオ技術について討論する目的
で本シンポジウム(第55回生存圏シンポジウム)を開催します。

 樹木(木質バイオマス)は年輪構造に光合成産物を持続的に蓄積することが可能で、
太陽エネルギーの最も効率的な変換・貯蔵システムといえます。また、木質バイオマ
スは山岳地帯や低降水量地帯など農業と競合しない地域でも生産可能であることから、
トウモロコシやサトウキビなどのエネルギークロップに替わる次世代バイオマスとし
て期待されています。しかしながら、現在、木質(細胞壁)は超微細構造、化学構造
が十分に解明されておらず、石油代替資源としての利活用があまり進んでいないのが
現状です。本シンポジウムでは、木質バイオマスの生産技術、利用技術の学術的基盤、
木質資源の安定供給、高度利用の促進に向けた基盤整備等について討論します。

 森林資源の持続的利用法が確立されれば、化石資源依存型社会から脱却でき、人類
が持続的に存続可能な共生型社会を構築することが可能になります。また、森林資源
の利用拡大が進めば、森林管理が促進され、国土保全に繋がるばかりでなく、新規市
場の創出による雇用の増大、地域の活性化等様々な波及効果も期待されます。
 皆様のご来場をお待ちしております。

 日 時:2006年10月20日(金)13:00-17:40
 場 所:名古屋大学環境総合館1階レクチャーホール
◇詳しくは http://www.jwrs.org/cgi-bin/bltnbrd/SympForest0912.pdf をご覧
ください。

◎講演会『日本林業再生の道(Part II) −現場の取組み−』

 2005年夏、京都で開催された日本学術会議林学研連、木材学研連合同シンポジウ
ム「日本林業 再生の道−新たな森林産業の構築へ向けて−」は、雨模様、休日に開催
されましたが、一般市民、 大学、林業・林産関係者、行政等、170名以上の参加者
が集まり、活発で熱い討論が展開されました。わが国の国産材の利用に関して幅広い
層の関心の高まりを示したものと言えます。 

 この度、森林学・木材学分野の連携のための学術会議研究連絡委員会の後継組織と
して発足した森林・木材・環境アカデミーが主催して、上記シンポジウムの第2弾と
して、現場の取組みに焦点を当て、日本林業再生の道(Part II)を開催いたします。奮っ
てご参加ください。

 日時:2006年11月5日(日) 午後1:00-5:00 
 場所:京都キャンパスプラザ(JR京都駅前)
◇詳しくは http://www.jwrs.org/cgi-bin/bltnbrd/ATT00007.pdf をご覧ください。

◎シンポジウム『真価を問う! −アジア・パシフィック諸国における木質ボードの最
新事情−』

 このシンポジウムは日本木材加工技術協会木質ボード部会が主催するもので、木質
ボード類の生産状況、技術課題、原料事情、リサイクル原料の使用状況と問題点など
について、国内ならびに中国、韓国、マレーシア、インドネシア、米国、オーストラ
リア各国の情報がそれぞれの国からの招待者によって紹介されます。木質資源をめぐ
るグローバルな論議がなされるものと期待されます。

 日 時:平成18年11月17日 (金)
 会 場:東京木材会館7F
◇詳しくは http://www.jwrs.org/woodience/mm001/boad_bukai.pdf をご覧くだ
さい。
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■日本木材学会の刊行する学術雑誌はインターネットで読むことが出来ます。最新の
学術情報をぜひご覧ください。

◎和文誌:木材学会誌 電子ジャーナル版
  http://www.jstage.jst.go.jp/browse/jwrs/-char/ja/

◎欧文誌: Journal of Wood Science 電子ジャーナル版
  http://www.springerlink.com/content/1611-4663/
  
━━━━<広 告>━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「ウッディエンス」では以下の欄に掲載する5行広告を募集します。
なお、広告は日本木材学会の賛助会員からのみ受け付けます。
詳しくは末尾の広報・情報委員会までメールでお問い合わせください。
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□   ウッディエンス・ホームページ http://www.jwrs.org/woodience/          
□   日本木材学会ホームページ   http://www.jwrs.org   
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